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群馬県の方言である「上州弁」は、荒々しく力強い響きが特徴的です。初めて聞く人には少し怖く感じられることもありますが、その裏には温かみと情熱が隠されています。本記事では、群馬の方言でよく使う定番のフレーズから、県外の人が驚くような独特の言い回しまで詳しく解説します。
地元の方とのコミュニケーションを楽しみたい方や、群馬の文化を深く知りたい方にとって、役立つ情報が満載です。標準語との違いを楽しみながら、上州弁の魅力を再発見してみましょう。これを読めば、あなたも明日から群馬の言葉を使いこなしたくなるかもしれません。
群馬県内で生活していると、日常的に耳にする独特の語尾や言い回しがあります。これらは「上州弁」の根幹を成すもので、会話のリズムを作る重要な要素です。まずは、群馬の方が無意識のうちに多用している基本的な方言から見ていきましょう。
群馬の方言として最も有名なのが、語尾に付く「だんべ」です。これは標準語の「〜だろう」や「〜でしょ」に相当する言葉で、推測や同意を求める際に頻繁に使われます。例えば「そうだろう?」と言いたいときは「そうだんべ?」と変化します。
この表現は、相手に対して威圧感を与えるものではなく、親しみを込めた確認のニュアンスが強いのが特徴です。また、単に「だんべえ」と語尾を伸ばして使うことも多く、会話の語尾にリズムを添える役割を果たしています。若い世代では使う機会が減っていますが、年配の方の間では現役の言葉です。
もう一つよく聞くのが、文の途中に挟まれる「さ」です。これは「昨日さ、学校でさ」のように使われる接続詞的な役割を持ちますが、群馬ではその頻度が非常に高い傾向にあります。言葉を強調したいときや、話の続きを注目させたいときに自然と口から出てくる表現です。
【使用例】
・「明日も雨だんべぇ」:明日も雨だろうなぁ。
・「あのさ、あそこにあるさ、りんご取ってくんねえ?」:あのね、あそこにある、りんごを取ってくれない?
会話の中で相槌を打つ際、群馬では独特の肯定表現が使われます。代表的なのが「そうん」という言葉です。これは「そうです」や「その通り」という意味ですが、語尾が鼻に抜けるような独特の発音になります。
また、同意を示す際に「ほう」や「ほうだ」と言うこともよくあります。これらは短い言葉ながら、相手の話をしっかりと受け止めていることを示す力強い相槌です。標準語の「はい」よりも少しカジュアルで、親密な間柄で交わされることが多い傾向にあります。
これらの相槌は、上州人の素朴で実直な性格を表しているとも言えます。飾らない言葉でストレートに肯定を示すことで、お互いの距離感を縮める効果があります。群馬で会話を楽しむなら、まずはこの短い相槌から取り入れてみるのがおすすめです。
「〜じゃない?」や「〜だよね?」と相手に同意を求める際に使われるのが「がね」です。例えば「これ、美味しいがね」と言えば「これ、美味しいよね」という意味になります。標準語の「〜じゃん」に近いニュアンスを持っています。
この「がね」は、相手を自分の意見に引き込みたいときや、共感を呼び起こしたいときに非常に便利な言葉です。イントネーションは語尾を少し上げるように発音するのがポイントです。女性が使うと少し柔らかい響きになり、男性が使うとぶっきらぼうながらも親密な印象を与えます。
また、「がね」の変形として「かね」が使われることもあります。地域によって微妙な差異はありますが、どちらも相手との共感を大切にする上州弁らしい温かい表現です。日常のちょっとした会話に混ぜるだけで、一気に地元感が増すフレーズと言えるでしょう。
群馬の方言は全体的にアクセントが平坦な「無アクセント」の傾向があります。そのため、怒っているように聞こえても、実はただ普通に話しているだけということも少なくありません。

群馬県内で当たり前に使われている言葉の中には、標準語と全く違う意味を持つものが存在します。これらは、他県から来た人が最も戸惑いやすいポイントであり、上州弁の面白さが詰まった部分でもあります。勘違いが生じやすい言葉をピックアップしてご紹介します。
群馬でお風呂に入ろうとした際、「お湯をうめておいて」と言われたら注意が必要です。標準語で「埋める」といえば穴をふさぐことですが、群馬の方言で「うめる(うなめる)」は、熱いお湯に水を足して温度を下げることを意味します。
そして、水が足されてちょうど良い温度になった状態を「うまる」と言います。「お風呂、うまったよ」と言われたら、それは「お風呂が適温になったよ」という合図です。この言葉を知らないと、お風呂の栓を抜いてしまったのか、あるいは土で埋めてしまったのかと混乱してしまいます。
この表現は、温泉地が多い群馬ならではの言葉とも言えます。熱い源泉に水を加えて調整する文化が、家庭の言葉としても定着したのでしょう。日常的に使う言葉だからこそ、他県の人とのギャップが大きく、笑い話の種になることも多い方言です。
「うめる」の語源は、お湯を「薄める」から来ているという説があります。群馬だけでなく、隣接する栃木県など北関東の一部でも使われる表現です。
朝、寝ている人に対して「起きて」と言うのは全国共通ですが、群馬では座っている人に対しても「おきて」と言うことがあります。これは「立ち上がって」や「直立して」という意味で使われる上州弁特有の言い回しです。
例えば、授業中や集会で「おきてください」と指示が出たら、それは「起立してください」という意味になります。寝ているわけではないのに「起きて」と言われると、県外の人は「寝てないよ!」と反論したくなりますが、これは単に姿勢を変えることを促しているだけなのです。
逆に、垂直に立っている状態を「おきている」と表現することもあります。物が倒れずに立っている様子を見て「しっかりおきてるね」と言うこともあります。この言葉の使い分けができるようになると、群馬の生活リズムにかなり馴染んできている証拠と言えるでしょう。
群馬には独特な響きを持つ動詞がいくつもあります。その中でも代表的なのが「ばっきる」です。これは「折る」や「壊す」といった意味を持ちますが、特にバキッと力強く折るようなニュアンスが含まれています。
また、物を放り投げることを「ぶっきら」や「ぶっから」と言うこともあります。これらは一見乱暴な言葉に聞こえますが、日常生活の中で「ゴミをぶっきっておいて(捨てておいて)」のように、ごく自然に使われる表現です。上州弁らしい、勢いのある動詞の代表格です。
さらに、膝などを擦りむくことを「むしる」と言うこともあります。通常「むしる」といえば草を抜く動作などを指しますが、群馬では皮膚を擦りむく怪我全般に使われます。「転んで膝をむしっちゃった」と言われても、驚かずに「大丈夫?」と声をかけてあげてください。
自分の気持ちや、物の状態を細かく伝えたいときにも上州弁は活躍します。標準語では一言で言い表せないような、微妙なニュアンスを込めた表現が豊富です。ここでは、感情表現や状態説明によく使われる言葉を見ていきましょう。
少しだけ、ほんのわずかという意味で使われるのが「ちっとんべえ」です。「ちっと」は少しという意味ですが、そこに「べえ」が付くことで、より少なさを強調したり、謙遜したりするニュアンスが加わります。
例えば、料理を小分けにしてもらう際「ちっとんべえでいいよ」と言えば、「本当に少しだけで大丈夫だよ」という控えめな意思表示になります。この言葉には、上州人の慎ましさや、相手に気を使わせない優しさが込められているように感じられます。
また、反対に量が多いことを「おーか」と言うこともあります。「おーかあるね」と言えば「たくさんあるね」という意味です。このように、量の多寡(たか)を表す独特の語彙を使い分けることで、会話に深みと地元の色合いが生まれます。
群馬で頻繁に使われる副詞に「なから」があります。これは「だいたい」や「おおよそ」という意味ですが、文脈によっては「かなり」や「相当な」という強調の意味で使われることもあります。非常に多機能で便利な言葉です。
仕事の進捗を聞かれた際に「なから終わったよ」と言えば、「ほとんど終わったよ」という意味になります。一方で、非常に大きな物を見て「なからでかいね」と言えば、それは「かなり大きいね」という感嘆の意味合いを含んでいます。相手の表情やトーンから意味を読み取るのが上州弁の醍醐味です。
また、前述の「おーか」も強調として使われます。「おーかいい」と言えば「すごく良い」という意味になり、最大級の賛辞として受け取ることができます。これらの副詞を使いこなせると、自分の感情をよりダイレクトに相手へ伝えることができるようになります。
【副詞のバリエーション】
・なから:だいたい、ほとんど、かなり
・おーか:たくさん、非常に
・ちっとんべえ:ほんの少し、わずか
群馬県民が急いでいるときによく口にするのが「とぶ」という言葉です。これは空を飛ぶことではなく、地面を「走る」ことを意味します。遅刻しそうなときに「とんでいくから!」と言えば、全速力で走っていくという宣言です。
標準語の「走る」よりも、さらにスピード感がある、あるいは切羽詰まっているようなイメージを伴います。子供が廊下を走っているのを先生が注意する際も「とんじゃいけません!」と言うことがあります。初めて聞く人には、空中に浮いているように聞こえるかもしれませんが、実際は足元を指しています。
この「とぶ」は、上州弁の中でも非常に使用頻度が高く、かつ標準語とのギャップが面白い言葉の代表格です。群馬で「とんで!」と言われたら、ジャンプするのではなく、すぐに駆け出す準備をしましょう。
家庭内での家事や、食卓のシーンでも上州弁は息づいています。生活に密着した言葉は、親から子へ、そして孫へと受け継がれやすく、今でも多くの家庭で使われています。キッチンや掃除の時間によく登場する方言を確認してみましょう。
群馬の食卓で欠かせない言葉といえば「おこんこ」です。これは「お香の物」、つまり「お漬物」のことを指します。特に自家製の漬物を大切にする文化がある群馬では、非常に親しみを持って呼ばれる愛称のようなものです。
また、液体をかき混ぜる動作を「かんます」と言います。スープを「かんまして」と言われたら、スプーンやお玉でぐるぐるとかき混ぜてください。単に「混ぜる」と言うよりも、底からしっかりと攪拌(かくはん)するような力強さを感じる響きです。
これらの言葉は、家庭料理の温かさを象徴しています。「おこんこ食べて、しっかりかんましたお味噌汁を飲む」といった日常の風景には、上州弁がごく自然に溶け込んでいます。他県から来た方が群馬のお宅にお邪魔した際、これらの言葉が出てくると非常に家庭的な歓迎を受けている証拠です。
【食に関する方言まとめ】
・おこんこ:お漬物
・かんます:かき混ぜる
・ぶちまかす:こぼす、ぶちまける
・たべる:交換する(地域による)
掃除の時間によく使われるのが「はわく」という動詞です。これは「掃く」という意味で、箒(ほうき)を使って床を掃除する際などに使われます。「玄関をはわいておいて」と言われたら、箒できれいに掃除をしましょう。
次に、散らかった物を整理することを「かたす」と言います。これは「片付ける」が短くなったものですが、群馬を含む東日本で広く使われています。ただし、群馬では特に頻繁に使われ、日常会話の中で「早くおもちゃをかたしなさい」といった叱り言葉としても定着しています。
また、汚れた状態を「ぶすぐれる」と表現することもあります。これは不機嫌な顔をすること(ふてくされる)を指す場合もありますが、物が汚れていたり、状態が悪かったりすることを指す場合もあり、文脈によって使い分けられます。家事を通じても、上州弁の多様性を感じることができます。
「上州のからっ風」で知られる群馬県は、冬の寒さが非常に厳しい地域です。そんな寒さを表現する言葉も独特です。まず、水や物が冷たいことを「ひゃっけい」と言います。これは「ひゃっこい(冷やっこい)」が変化したもので、より鋭い冷たさを感じさせる響きです。
さらに、気温が氷点下になり、空気がキーンと冷え込む様子を「しみる」と言います。標準語の「凍みる」と同じ意味ですが、群馬では「今朝はしみるねぇ」という挨拶が交わされるほど、冬の日常に定着している言葉です。ただ冷たいだけでなく、骨身にこたえるような厳冬のニュアンスが含まれています。
このように、気候に関連した方言は、その土地の風土を色濃く反映しています。厳しい冬を乗り越える群馬の人々にとって、「しみる」という言葉は共通の苦労を分かち合う、共感の言葉でもあるのです。
群馬の方言を語る上で絶対に外せないのが「上毛かるた」です。群馬県民なら誰もが暗唱できるこの郷土かるたには、上州の歴史や文化、そして言葉の響きが凝縮されています。かるたを通じて、方言への理解をさらに深めていきましょう。
上毛かるたの最初の札である「つる舞う形の群馬県」は、群馬県民の合言葉です。このフレーズ自体に方言が含まれているわけではありませんが、このかるたを幼少期から親しむことで、群馬特有のイントネーションやリズム感が身についていきます。
かるたの読み札は、独特の節回しで読まれることが多く、それがそのまま上州弁の標準的なテンポとして定着しています。県民が集まれば、かるたの札を言い合うだけで一体感が生まれるほど、この文化は根付いています。方言を学ぶことは、こうした郷土愛に触れることでもあるのです。
また、かるたの中には地元の地名や名産品が数多く登場します。それらを口にすることで、自然と群馬のアクセントや、言葉の繋がり方が体に染み込んでいきます。上毛かるたは、まさに生きた方言の教科書と言っても過言ではありません。
かるたの中には、現代では少し珍しくなった古い言い回しや、上州弁らしい力強い言葉使いが含まれています。例えば「雷(らい)と空風(からかぜ)義理人情」という札は、群馬の荒々しい気候と、そこに住む人々の情の深さを象徴しています。
この「義理人情」という言葉の裏には、ぶっきらぼうな上州弁の中にある優しさが表現されています。言葉が荒く聞こえても、中身は温かいという群馬の気質を知る上で、非常に重要なキーワードです。かるたを覚えることで、言葉の表面的な意味だけでなく、その奥にある精神性まで理解できるようになります。
また、かるた大会の練習などを通じて、年配の指導者から直接言葉を教わる機会も多いです。そこで交わされる「もっと早く!」「だんべ!」といった生の方言が、子供たちに自然と継承されていくのです。文化が言葉を守っていると言えるでしょう。
上毛かるたは1947年に誕生しました。戦後、子供たちに郷土の誇りを持ってもらうために作られたもので、今では群馬県民の最強の「共通言語」となっています。
現代では全国的に方言が薄れつつありますが、群馬では上毛かるたのおかげで、ある程度の語彙やリズムが守られています。お正月にか家族でかるたを囲む風景は、今でも多くの家庭で見られ、そこで方言のバトンが渡されていきます。
若い世代が「だんべ」をあまり使わなくなったとしても、「おきて(立って)」や「うまる(薄まる)」といった生活に密着した言葉は、依然として強く残っています。これは、それらの言葉が群馬の生活習慣と密接に結びついているからです。
方言は単なる言葉のバリエーションではなく、その土地の歴史や人々の営みの記録です。群馬の方言をよく使うことは、地元の文化を大切にすることに他なりません。これからも上毛かるたとともに、独特で魅力的な上州弁は続いていくことでしょう。
群馬県内では、毎年2月に「上毛かるた県大会」が開催されます。子供たちが真剣に札を取り合う姿は、群馬の冬の風物詩です。

群馬の方言である上州弁は、力強く威勢の良い響きが大きな魅力です。今回ご紹介したように、「だんべ」といった定番の語尾から、「うまる」や「おきて」といった意味の取り違えやすい動詞まで、多種多様な表現が存在します。これらの方言をよく使うことで、地元の人々との距離はぐっと縮まり、会話に温かみが生まれます。
一見すると少し無愛想に聞こえることもある上州弁ですが、その背景には「義理人情」を大切にする群馬県民の温かい心が流れています。からっ風に負けない力強さと、おこんこを囲む食卓のような素朴さを兼ね備えたこの言葉は、群馬の大切な宝物です。
もし群馬を訪れたり、地元の方と話したりする機会があれば、ぜひ今回学んだフレーズを思い出してみてください。完璧に使いこなせなくても、方言に興味を持つだけで相手との絆が深まるはずです。言葉の響きを楽しみながら、上州弁が彩る群馬の魅力を存分に味わってください。
| よく使う方言 | 標準語の意味 | 主な利用シーン |
|---|---|---|
| だんべ | 〜だろう、〜でしょ | 同意や推測の語尾として |
| うまる | (お湯が)ぬるくなる | お風呂の温度調整時に |
| おきて | 立って、起立して | 座っている人を立たせる時 |
| とぶ | 走る | 急いで移動する時 |
| かんます | かき混ぜる | 料理や飲み物を混ぜる時 |